アニメ 翠星のガルガンティア 第8話 「離別」 感想
「十分と完璧はちがうよ」船団分裂の危機に精神的支柱でもあった船団長が息を引き取り、後を託され、船団分裂を阻止できない自らの無力さを噛み締めるリジットに声をかけるベローズの優しさが素敵です。今回はリジットにも焦点が当てられた回でした。
「立派になって・・・キミの父上にも胸を張って報告できる」死期を悟ったフェアロック船団長はガルガンティアの鍵(?船団長の証の象徴的なものか、もしくはガルガンティアの中枢部を操作するためのマスターキーのようなものなのか)をリジットに託して永久の眠りにつきます。このタイミングで!レドのクジライカ事件が船団分離騒動までに発展している時に、唯一船団の求心力になれるかもしれないのが船団長だっただけに・・・ガルガンティアを構成する大船主のフランジが船団を離れるというのでまだ若いリジットよりもフランジについていこうとするものも多く。リジットが必死に皆を引きとめようとすればするほど離れていく人心・・・
「本隊への帰還は事実上不可能と断定」兵士としてヒディアーズの殲滅を叩き込まれてきたレドにとって生物的にほぼ同一種といっていいクジライカとの共存など受け入れらない。そんな折にチェインバーから唐突に地球の位置座標が分かったと伝えられてもすぐに反応しないレド。地球に辿り着いた頃のレドだったらすぐに反応したでしょうに。この間が レドが銀河同盟兵士だった頃とは違う気持ちが芽生えてるんだなぁ、という感が伝わってきて良かったです。帰還には超光速航法が必要、当機単独では不可能、救難信号が同盟に到達するだけでも約6582年16時間20分かかるとの事で事実上帰還が不可能であることが報告されます。兵士としての任務にこだわり、船団を出て行くとまで言ってエイミーとの間に溝を造ってしまったうえに更に同盟にも帰れない事が分かったときのレドの気持ちが気になります・・・本当にもう帰れないんでしょうかねぇ。チェインバー単独では無理、となると一つは銀河同盟のほうからレドを見つけてくれるというパターンかな?ヒディアーズを探索していた同盟が地球を見つける、とか。あとはやっぱりクジライカの巣に眠ると噂される過去の遺産が恒星間宇宙船だった、とかね。もちろんこのまま地球人になっちゃうっていうのもありだけど、でもやっぱり最後はレドは星界に還っていくような気がするんだけどな。
「あのさぁ、彼について行ってもいいんじゃない?」ガルガンティア船団を離れるというレドに声をかけることも出来ず思い悩むエイミーに親友のサーヤの励ましが心温まります。でも「まだ・・・始まってもいないよ」レドに自分の気持ちを伝えることも出来なくレドが自分のことをどう思っているかも不安なエイミー、病弱なベベルをおいていけないし、と自分に言い聞かせているエイミー、切ないですね。ちなみにもう一人の親友メルティーの家はフランジの船団にあるそうでじいちゃんのこともほってはおけない、とガルガンティアを去るそうです。ガルガンティアを去ろうとするレドについていかない決心をするエイミーに「よかった、私だってエイミーがいなくなったら寂しいもん」と微笑むサーヤ。この子はエイミーがレドについていくことを選んでも、船団に残ることを選んでも、どちらでも「よかった」って言ってくれそう。その最中にも船団長の葬儀はしめやか進行していきますし、船団のあちこちで連結器が外される作業もすすでいます。
「あんたが頑張っているのは知ってるさ、十分だ。・・・十分と完璧はちがうよ」フランジの船団が離れていくのを止めることができず焦燥感に打ちひしがれるリジットを励ましに来たのはベローズ。初めて親方から仕事を任された時の過去の自分の失敗談を交えてリジットを励ますという相変わらずの男前さを発揮します。「一人でどうにかすればいいってもんじゃないんだ。だから・・・」と助言するベローズ。でも船団長はやっていた、と反論するリジットに「あのじいさんだってあんたを頼ってた。あんたがやらなきゃならないのは、誰に何を頼めばうまく行くか、考えることじゃないのか」と言います。サルベージ屋としてそれなりに従業員を抱えてやっているのでしょう。ベローズは何というか経営者としての哲学が知らず知らすのうちに身についているようで、その辺はまだ船団長になりたてのリジットにはない貫禄があります。ベローズとリジットは同じ年頃の良き女友達という感じもあってこの二人の関係にも好感が持てます。
次々と離れていく船、船団長室(?)の壁面の船団図の連結部のランプが次々と消えていくのがそれを現わしている。その船団図を見ていたリジットは今まで点灯していなかった連結部のランプが燈るのを見つける。結構ジーンと来るシーンです、リジットが窓から外を見ると新たに船と船の間に架橋され、ガルガンティアに移って来る人々もいる。以前レドが海賊とのひと悶着(の時だったと思う)を起こした時にフェアロックがリジットに「判断はお前に任せる」と言ったシーンが流れてこの物語ってほんとにうまい事組み立てられてるなぁと感動しました。
「ほんとだよ・・・あのバカ。どうして自分こと大事にしてくれないんだろ。お祭りのとき、レド楽しそうだった、笑ってたんだよ。でも今は、初めて会ったときより苦しそう。きっと、あの時のレドが本当のレドだったのに・・・」夕食の準備をしながら悲しむエイミーの後姿にベベルは病身をおしてレドのところに向かいます。どうしても行くのか、それがレドの本当のやりたいことなのか、と訊ねるベベル。「人類を守る為だ。エイミーを守る為でもある」と応えるレド。そんなことを姉さんは望んでいない、と反論するベベルに例の笛を渡すレド。かって自分によく似た、笛の持ち主だった、弟だったかも知れない少年を失ったレド。銀河同盟では戦えない虚弱なものは淘汰される・・・地球のヒディアーズ(クジライカ)も生存領域が拡大して人類と衝突するようになったら地球も銀河同盟のようになり、体の弱いベベルは生きることが許されなくなる。エイミーにもそんな悲しい別れを味わせたくない、とかなりぶっ飛んだ発想を語りだすレド。でもクジライカ打倒の理由がただ人類の敵!殲滅!ではなくてエイミー達のことを考えてのことになってきているんですよね。お互いがお互いのことを想っているのに別離に向かっていくというのが悲しい。
船団長の葬儀もいよいよ終盤に差し掛かり棺を海に流す段になって喪服に着替え葬儀に駆けつけるリジット。「ありがとう・・・ございました」と最後の別れをすますリジット。棺は銀河道の翠の燐光に輝く海に流されていく。棺を見送ったリジット、髪留めをとき、船団員たちのほうに振り返り自らの想いを訴えます。「皆さんにお話したいことがあります。私はフェアロックに、このガルガンティアを託されました。前船団長は最後まで、この船団の行く末を考えていました。私は、それに答えたいのです。私は、前船団長が愛したガルガンティアを、皆さんの暮らしを乗せた、この船団を守りたい。ですが、私の力では、ここを去りたいという人々を、引き止めることすら出来なかった。私は無力です。だからこそ、皆さんに力を貸していただきたい。もし皆さんが、この船団を、私たちの生活の砦、ガルガンティアを守りたいと、そう思ってくださるのなら、どうか、私を助けてください」
「レド、行っちゃうんだね。あのね、これ、預かるだけだから。だから、いつでも戻ってきて」レドはエイミー達に別れをいいに来ます。一方離れていく船団からの申請書にサインをするリジット。そして船団は二つに分かれて行きます。レドが、レドがやっぱり行かないって言えばすべてが元に戻るのでは?レドとチェインバーが行かなければピニオンはクジライカの巣を探ることも出来ないわけだし、フランジも船団を離れる目的の一つがなくなるわけだし。良くも悪くも(そして今のところ「悪くも」の方が勝ってるけど)船団に影響を与えまくるレドとチェインバーですが、これから二つに分かれてしまった船団に何が起こるのか・・・なんかフランジたちの船団、壊滅しそうな気がするな。クジライカってヒディアーズそのものなんでしょ?そんなクジライカがうじゃうじゃいる所に攻め込んだらチェインバー一機ではやばくね?ほんとにピニオンは余計な気を起こしてくれたもんだよ。それにしても今回はレドとエイミーの別れに、船団長になったリジットに苦悩を絡ませた、深みのある物語になっていて面白かったです。
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